平野 満子さん
1日のはじまりは、食べ慣れたパンがいい。
そんなパン愛好家が、京都には多いのでしょう。
グランディールにご来店いただくお客さまの多くは常連の方。
それも1年や2年ではなく、10年20年、ときには3世代でご贔屓いただく方もいらっしゃいます。
ここでは、そんな長く通っていただいた方にインタビューしていきます。
365日のパン。
毎日焼きあがるパンの向こう側には、いつものお客さまの変わらぬ笑顔が見えます。
365日のパン。一人目は、グランディール下鴨店から徒歩1分のご近所で理容店を営む平野さんです。平野さんは、創業当時からグランディールに通われているとか。話は下鴨店が出来た頃に遡りました。
「グランディールさんが出来たのは平成元年でしょ? 30年目ですか。私んとこは39年目になりますわ。店やってると、他の店屋さんが来るっていうのはいいことなんですよ。活気でるから。そやから当時はパン屋さん出来るんやなー、うれしいなーって思いました」
もう何十年も前の話なのに、つい最近できたかのように微笑む平野さん。来店された最初の印象を聞いてみました。
「やっぱりまずおしゃれな感じ。今までのパン屋さんと違う。普通のジャムパンとかクリームパンとかでも名前変えてやってはるでしょ。味も(他のパン屋と)全然ちがう。パンっていうのは、私らはお腹空いたらあんパン食べて、サンライス食べてって時代で育ってるから。フルーツサンド知ったのも初めてだし。いやあ変わったんがあるわって」
お話をお聞きしたのは平野理容店の中。懐かしさを残す店内では、平野さんの息子である店長が、お客さんの髪を切る小気味好い音が響きます。
「仕事の合間に行きますから、お店の状況で変わりますね。でも週に2回は確実に行きます。……でも私んとこは3食ともご飯なんですよ(笑)。パンはおやつとして食べてます。
あとね、ケーキ屋さんで買ってきてくれはったかなーって感じるパンも置いてあるでしょ。せやさかいにちょっとお客さんが来た時にパッと買いに走って出しても喜ばれるし。そういう風なお茶請けにも使わせてもらってます」
パンは日常食。だから、気づいたら生活の中に溶け込んでいくものなのかもしれません。
食べ慣れた味の中でも、とりわけ好きな商品を聞いてみました。
「カスクルートっていうのかな。チーズとハムが挟んであるやつね、あれは1本今でもいただきます。もうじきしたら半分しか食べられなくなるかもしれませんけど。うちの子はクリームパンが大好き。
それと、近所の奥さんはお孫さんが来られるとグランディールさんでパン買うてあげてますわ。その並びで、お孫さんがうちで散髪するようになってね。今日散髪くるさかいにパン買ってこーとかね。どっちが目的かわかんないけど(笑)。その子はもう高校3年になってますけどまだ来てますわ」
最後に、今後グランディールに期待することはありますか、と平野さんに聞くと、にっこり微笑んでこうおっしゃいました。
「私らになってくるともう店を決めてしまうんですよ。洋服買うにしてもあの店とかね。だからグランディールさんには変わらぬ味でいてくれたらと思います。素朴な味で」
グランディールのパンが近所の方の生活に根付いている、そのワンシーンを垣間見たようなインタビューになりました。明日の朝も、グランディールのパンが変わらず焼きあがるように、平野理容店からも髪を切る音が途切れることはないのだろう。そう思わされる時間でした。